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『Perch』感想

#本 #感想

いろんな形式の作品がおさめられたアンソロジーを読んだのはたぶん初めて? だったけど、飽きずにするすると読み進められた。間に挟まる自由律俳句がいい味出してる。箸休めのようでありながら、「旅」というコンセプトからみればこの箸休めがむしろメインディッシュだよなみたいな印象も抱きつつ読んだ。この俳句があるからこそ、丸まってきた背中を伸ばしてひと息ついて、またページをめくることができる。いい働きをしてる。

アンソロジーを侮るわけではなく、純粋な感想として「こういうのでいいんだ」と思った。1冊の本というのはこんなに自由でいいんだな、という安心感をもらった。

全体的には、日曜日に見る夢みたいにふんわりした不思議な話が多くて、ふむふむ〜面白いな〜と気楽に読んでいたんだけど、最後の1編でグッと景色が変わる感じがあって引き込まれた。これがなかったら、不思議な夢を見て起きた直後のぼんやりした気分のまま本を閉じて、「よくわからなかったなあ」という感想で終わっていたかもしれない。ちょっと変わった装丁も手伝って、『ニンギョウがニンギョウ』を思い出した。あそこまで奇っ怪じゃなかったけど。

というかそもそもだけど、又吉くんの本をちゃんと読むの自体が初めてだったな。面白かったから他の作品も読んでみたい。

装丁といえば、表紙にカラバリがあるのもさることながら、本文用紙が面白くて、その点でも飽きなかった。表がツルッとしていて裏がざらついてる、書道用紙を5段階分厚くしたみたいなやつ。なんでこれを本文用紙に使おうと思ったんだろう? しかも全部じゃなくて一部だけ。面白いなあ。

「空港でしか買えない」ことによって、必然的にほぼ100%「移動中」というシチュエーションで読まれることになる本。短編や掌編が多くて、任意のタイミングで本を閉じやすいこともそのへん考えられてるんだろうな。しおりが2枚もらえるのも面白かった。

  • 空港でしか買えない
  • 表紙にカラバリがある
  • 本文用紙の手触りが面白い

このへんによって「紙の本を買う」という体験に価値が生まれているなあ。カラバリの件とか、ぜったいSNSに写真をupさせるための仕掛けでもあるんだけど、あんまり押しつけがましくないというか、「みんなにシェアしてね!!!!!」感がない。さじ加減がうまいな〜と感心した。自分はとりあえず写真だけ撮って、SNSには上げずに眺めて終わりとした。