2023-04-04

新しく買ったキーボードが届きました。いいですね。……という一文を、まさにそのキーボードで試し打ちしてみた。ロジクールのK380という機種で、軽くて薄くてコンパクト。無線でiPhoneやiPadに接続して使える。サブ的なポジションで使うつもりだから、かわいさ重視でラベンダー色を選んだ。


Twitterの仕様がまた変わるらしく、過去の投稿を見返していたら、2年半前の日記を見つけた。転職活動で採用された会社に、一転して内定取消しを食らった日のものだ。

その会社とのやりとりは、至極スムーズに進んだ。面接というよりは面談に近いくらいの打ち解けた雰囲気の中、2人の面接官は、わたしについて「申し分ない」と断言してくれた。わたしがそれまでに勤めた会社のことも面接官たちは知っていて、あそこで働いていたのなら何も心配ありません、とも言った。これまでの経験を活かしつつも新しいことにチャレンジしてほしい、と入社後の具体的な業務内容まで説明してくれて、落ちることなんて万が一にもあり得ない空気のまま面接は終わり、その手応えの通りに、すぐ内定の連絡が来た。おめでとうございます、と、転職エージェントの担当さんの声も弾んでいた。

入社手続きの際に、担当さんを通して「最近入籍したので、旧姓のままの書類もあるが、それでもよいか」と問い合わせると、ほどなくして電話が鳴った。担当さんからだった。

「内定を取り消したいと言っています」と、電話越しにも明らかに動揺している様子で担当さんは言った。「え?」と、笑顔を作りかけたままの中途半端な顔で聞き返したら、彼女は震える声で説明してくれた。

内定先(だった)企業は、わたしが最近入籍した身だと知ると、ならば内定は取り消したいと告げてきたそうだ。理由は「近いうちに妊娠されるリスク﹅﹅﹅があるから」。どうやら最近、社内でご懐妊された方がいるそうで、空いた穴を埋めるのにバタついているらしい。そこへ中途入社する人員も新婚となれば『近いうちに妊娠される』かもしれない、それは会社にとって『リスク』だ——ということらしかった。

意味が分からなかった。耳元にスマートフォンをあてたまま、頭の中では数え切れないほどの疑問が弾けて、暴れた。問いなのか怒りなのかさえ分からないそれらを制御することなんてできなかった。担当さんにまずなんと返答したのか、今ではもう思い出せない。覚えているのは、担当さんが泣きながら一言ずつ発してくれた言葉だけ。

「このタイミングで、こんな理由で内定を取り消されるなんてあり得ないし、あってはならないことです。相手方にはかなり強く伝えました。その……」ひと呼吸おいてから彼女は続ける。「……出るところに出る覚悟もこちらにはあると」

でも、企業側の考えは変わりそうになかったらしい。申し訳ありません、と担当さんは声を詰まらせた。

「私は山下さんに、人として、女性として、ご自身の体と暮らしを大切にしながら働いてほしいと思っていますし、私自身もそういう働き方がしたいと思っています。だから、この企業がこういった判断をするところだとわかった以上、私は山下さんに、ここを薦めることはもうできません。この企業と戦うよりは、もっと他の、よい会社を探すお手伝いをさせていただければと思っています。……悔しいです。力不足で、本当に申し訳ありません」
「いえ、あなたが謝ることじゃないです」

即答した。わたしと企業の間で戦ってくれたことがありがたいし、いま一緒に泣いてくれているだけでわたしは救われているし、本当に感謝している——というようなことを伝えた、つもりだ。嗚咽するほど泣いていたから、うまく話せていたか分からないけど。

数日後、ハローワークの窓口で転職活動の進捗を報告している最中にわたしは泣いてしまい、担当部署の方から優しく丁寧なヒアリングを受け、内定を取り消したその企業にはそれなりの《ご指導》が入ることになった。その後、そこがどうなったのかは知らないし、調べるつもりも今のところない。調べて出てきた公式サイトに、万が一「働きやすい会社です」なんて書かれていたら、今度こそ平静を保てないだろうから。

当時はかなり荒んだけれど、紆余曲折あった末、今はおおむね楽しく働ける職場に行き着くことができたから、一旦は結果オーライと言ってもいいかな、と思っている。

1つ新しい日記へ1つ古い日記へ